有心の百錬、鋼を成す!

常に自分の成長を目指して!

クリスマスの素敵な贈り物

ガチャ、カララン。

「どうもありがとうございました」

綺麗な包装紙に包まれたプレゼントを抱えると、足早に店を出た私は

帽子をかぶり歩き出します。

街はイルミネーションで宝石のように煌めき、行き交う人々は

笑顔で楽しそうです。

広場の中心にある大きなクリスマスツリーは綺麗に飾り付けられ、子供たちの笑い声と

共に楽しげな音楽も聞こえてきます。

 

「さぁ、プレゼントも買ったし、これで我が子も喜んでくれるだろう」

そう呟きながら家へと急ぎます。

家は郊外にあるため、1時間ほど歩かなくてはいけません。

「この季節は子供にとって最高だな。大人にだってプレゼントがほしいよ。」

少し不満を呟きます。

 

ふと立ち止まると、空から白い贈り物が、ゆっくり静かに落ちてきます。

「どおりで寒いわけだ。積もる前に早く帰ろう」

帽子を深くかぶり、マフラーを締め直します。

だんだんと建物や外灯も少なくなり、周りは暗く寂しくなってきます。

しばらく歩き続けたその時、空からシャンシャンと鈴の音が。

空を見上げると、そこには見覚えのある赤い服を着た白髭のおじいさんが

トナカイに引かれたソリに乗っています。

「あれはサ、サンタさん?」

目を丸くして、びっくりした表情とは裏腹に体が走り出します。

「サンタさん!私にもプレゼントをくださーいっ!」

普段出したこともない大きな声で叫んでいました。

しかし、その声はこだまするだけで、静寂の中に消えていきます。

 

「あれはサンタさんで間違いないよな?」息を切らしながら戸惑っていると

心の中に声が響いてきます。

その声は低く穏やかで、しかしはっきりと聞こえます。

「プレゼントはもう渡したよ。気づいていないのかい?胸に手をおいて

思い出してごらん」

これはサンタさんの声?

再びの不可思議な出来事に頭が混乱してきます。

「もうプレゼントは渡したって?」

「そんな物はもらってないよ」

雪はさらに強くなり、寒さで我に返ります。

とにかく家に早く帰ろう。

 

家に帰り、ドアを開けると

「パパ、お帰り! うわぁぁ!!プレゼントだ!ありがとう!」

子供のはしゃぐ声が響きます。

「あなた、お帰りなさい。外は寒かったでしょう?」

「ご飯もできているから、早く食べましょう」

妻が笑顔でやさしく迎えてくれます。

 

家の中は暖かく、美味しそうなご飯が食卓に並べてあり、豪華です。

暖炉の前には猫が眠っています。

寒い中歩いてきたのと、不可思議な出来事のお陰で、お腹はペコペコです。

クリスマスのお祝いをしながら、みんなで食卓を囲み、笑い声が響きます。

しばらくして気分も落ち着き、食後のコーヒーを飲んでいたとき、

ふとサンタさんの声を思い出します。

「あ、プレゼントってこのことだったのか!」

「暖かい家、温かいご飯、優しい家族と笑顔、みんなそばにあったんだ」

雷が落ちたような衝撃が走ります。

「私はだめだなぁ。いつも人と比べてばかりで、無いものねだりばかりだ」

「本当の幸せはすぐそばにあって、それに気づかないだけだったんだ」

「サンタさんはそのことを気づかせようとしてくれたのかもしれないな」

気がつくと自然と顔もほころんでいます。

 

「ねぇ見て!雪が積もっているよ」

子供の声にみんなで外に出ます。

吹雪は止み、一面銀世界です。雲の切れ目から、月が優しく照らし、

雪が輝いています。

「ありがとう、サンタさん。大切なことを気づかせてくれて」

そう呟くと、またシャンシャンと聞こえたような気がしました。

そして心の中に、またあの優しい声が聞こえてきます。

「メリークリスマス!」