あなたが今見ている景色は現実でしょうか?
今までの見解では、3つのステップを経て世界を体験すると考えられてきました。
1. 周囲の映像や音声を目や耳などの感覚器官が受け取る
2. インプットされた情報が脳の高次エリアに届けられる
3. すべての情報を脳が処理したあとで最終的な判断を行う
例えば、目の前にリンゴがあった場合、初めにその映像を眼球が
カメラのように撮影。画像が脳に送られ、そこでリンゴの映像として
処理されると考えられてきました。
ところが、この考えでは説明のできないことがあります。
ひとつの例としてテニス選手がいます。
プロのテニス選手のサーブの平均速度は190キロを超え、
トップ選手では200キロを超えます。
しかし、ここで問題なのが、見えたものを脳が処理するのには0.1秒かかる
ということです。どんなに動体視力が良い人でも、この数値は変わりません。
0.1秒をテニスで考えると、サーブを打った瞬間にボールは5メートル近く
進んだ計算になります。
これだけ視覚処理と現実の時間にズレがあるにも関わらず、
高速サーブを打ち返せる理由はなんでしょうか?
その疑問を解決するために生まれたのが、脳=物語の製造機というものです。
この考え方でもう一度ステップを見ていきましょう。
1. 周囲の状況がどう展開するかについて事前に脳が物語を作成する
2. 感覚器官が受け取った映像や音声の情報を脳の物語と比較する
3. 脳の物語が間違っていたところのみ修正して現実を作る
先ほどのテニスの例でいうと、サーブのトスをアップした瞬間に
脳は次々と物語を作り始め、過去に打ったコース、回転、スピードなどを
考慮して、実際のボールより早く体を動かします。
この能力により予測が可能になり、危機から体を守ったりできるのです。
日常生活においても、この能力が発揮されます。
毎朝触る玄関のドアノブの感触やドアが開いて見えた景色などを
毎回情報処理していたら、脳のキャパシティはいくらあっても足りません。
そのため過去の情報を使い回しした方がエネルギーを浪費せずに済むのです。
例えば、玄関開けたときに庭に猫がいたという変化があった場合には
その猫だけを情報に追加すればいいわけです。
このように私たちは決して現実をありのままに
体験しているわけではなく、VRで見るかのように
脳が作り出したシミュレーション世界に生き続けているのです。
あなたが今見ている景色は現実ですか? それとも脳が作った物語ですか?