地球上には歌や音楽が溢れています。
醤油を使ったり、狩りをしたり、十字架に祈ったり と多種多彩な文化が花開き、
それぞれ特徴的で違ったとしても、歌や音楽だけは世界共通であります。
人類はなぜ歌うでしょうか?
人類は数万年前、言語を獲得し仲間とコミュニケーションを取ることが可能になり
言葉に意味付けをして、複雑なやり取りができるようになりました。人間と同じように
声によるコミュニケーションをしている動物も多く見られます。
実例として挙げられることが多いのが、ベルベットモンキーが捕食者に会ったときに
発する警戒音です。ヒョウが近づいてきた時は大声で鳴き続け、ワシが来ると
キキッと短い声で鳴きます。ヘビをみると、チチチチと知らせます。それを聞いた
仲間はワシなら空をみて、ヘビなら下を確認して逃げます。このようにどの動物にも
食料の在処や天敵の情報を声によって共有するシステムがあります。
しかし、人間の言語はさらに細かい情報までも知らせることができます。
「ワシだぞ」「ヘビだぞ」だけではなく、「この方向から何匹のワシが来ている。
木の幹や岩の間に隠れるんだ」といった具合です。
本格的な言語を使えるのは、やはり人間だけのようです。
言語を使いこなすには、喉の筋肉が重要になってきます。
ここで簡単な実験をしてもらいたいのですが、息を止めることはできますか?
簡単過ぎますよね。内科で胸部レントゲン撮るときも息を止めます。
しかし、息を止めることのできる生物は人間以外に鳥とクジラだけなのです。
喉の筋肉を動かせるからこそ、息を止めることができます。この構造がある故に
私たちは本格的な言語を話したり、歌を歌うことができるのです。
「鳥が歌う」という言葉があります。「クジラが歌う」これも想像できるでしょう。
しかし、犬が歌うや牛が歌うは聞きません。
なぜこの三種のみが歌えるようになったかは定かではありませんが、
人類が最初に話した言葉は歌だった可能性があります。
ジュウシマツは7種類の音でできた3つの単語を並べて歌っています。
しかも、この並べ方には規則性、つまり文法があることがわかったのです。
ただし、ジュウシマツは求愛にしか歌を歌うことがなく、それ以外のメッセージは
送りません。ヒナはこの歌を聴いて、それを単語に切り分けて覚えているのが
最近の研究でわかってきました。それは人間にも当てはまるのではないかと
岡ノ谷一夫東大名誉教授は考えます。
人間の赤ちゃんは未熟の状態で生まれてくるので、主に母親は付きっ切りで面倒を
見ます。大声で泣けば「お腹はすいているのか」「おしっこがでたのか」と
甲斐甲斐しく世話をします。そのとき、多くの母親は他の大人と話すよりも
高い調子で、ゆっくり、抑揚をつけて話します。これはマザリーズと言われる
独特の言語で、母音が多かったり、繰り返しが多いのが特徴です。
マザリーズはmothereseとつづり、japaneseと一緒で、いわば「お母さん語」です。
赤ちゃんはもちろん言葉の意味はわかりませんが、自分に向けられている音を
気持ちよく感じ、自分でも発するようになります。マザリーズはまさに歌のような
感じで、それが洗練されていくと子守歌になるのではないかと考えられています。
歌を聴くことによって、感情をコントロールしたり、絆を深めたりと歌と人類は
切っても切れない縁にあるのかもしれません。声は化石には残らないので、想像する
しかありませんが、ホモサピエンスやネアンデルタール人も動物の骨で楽器を
作っていた化石は残っています。

その当時に思いを馳せると、自然の中で、歌によってコミュニケーションを取り
現代の我々と遜色ない生活が営まれていたという感慨深い事実があります。
なぜ我々は歌うのか?それは人類誕生から数万年の歴史を次の世代に語り継ぐため
ではないでしょうか。