今日は誰かに施しをしたくなるお話です。
「宗教ですか?」と言われそうですが違います。
人間には何かをしてもらうと、その相手にもお返しをしたくなる習性があります。
それを返報性の法則といいます。
人に親切にすると、相手も親切にしてくれる。多くの人が実感したことがあると
思います。仏教でもよく言われる説法ですよね。またキリスト教でも「汝、隣人を
愛せよ」と謳い、他人を愛せば、その人からも愛をもらい、世界が平和に
なるということです。先ほど、違いますと言っておきながら、宗教の話をして
しまいましたが、宗教に関わらず、政治でも、マーケティングでも返報性の
法則が活用されています。
では、具体例で見ていきましょう。
まず、マーケティングで有名なのが、無料サンプルです。
みんな大好きですよね。無料という言葉が。非常にお得感があって、脳内でも
幸せホルモンであるエンドルフィンが暴発していることでしょう。
しかし、タダより高いものはないという諺をご存じでしょうか?
メーカーは「新しい商品を知って欲しいから」「実際に使用感を試してほしいから」
という巧な話術でお願いしてきます。だが、メーカーの真の目的は我々に
恩を着せることです。メーカーからサンプルをもらったということは、
贈り物を頂いたという意味です。頂いたらお返しをしないといけないという
習性が無意識に発動し、つい買ってしまう。恐ろしい罠ですよね。
スーパーの試食コーナーも実はこの返報性の法則を利用しています。
「是非食べて味を確認してくださいね」と言って笑顔で店員さんが渡してくれます。
決して買ってくださいとは言っていないのに、なぜか買わないと悪いような気が
しませんか?消費者の行動原理をよく熟知している巧妙な罠です。
アリにとってのアリジゴクのように、一度はまったら抜け出せません。
最後に政治でも政治献金という形で存在しています。
しかし、政治家は「我々は勤勉であり、その法則も熟知している。すべての
国民を平等に扱うのが、我々の仕事だ。」と豪語していますが、実際には
政治献金で多くのお金を施してくれる企業や団体ほど、優遇されている事実が
あります。政治家も気づかないほど、返報性の法則が我々を蝕んでいるようです。
やはり本能には抗えないんですね。
ここまで読んでいただければ、返報性の法則を理解してもらえたと思います。
非常に厄介な習性ではありますが、上手に使えば、我々に恩恵を与えてくれる
素晴らしいものです。最初に出てきた、隣人愛もそうです。
相手は自分を映す鏡です。周りの人を見てください。みんな良い人たちですか?
もしそうでないなら、それは自分の行いが悪いのです。「他人が冷たい」
「嫌みを言ってくる」そんな人は他人を批判する前に自分の行動を思い起こして
みましょう。自分は他人に対してどんな態度で接していたかを。
自分が他人に親切にして、ポジティブな気持ちで接していれば、返報性の法則で
相手も気持ちよく接してくれるはずです。
貧乏性を拗らせて、相手にお金や気持ちを施すのを嫌がっていると、心まで
貧相になっていくことでしょう。見返りを求めず、施しの精神を忘れずにいれば、
必ず報われる人生になります。それは不変の原理なのだから。